たまにはこんな本も読んでます。
実は子供の頃から、割り勘などの計算が非常に苦手で、「お金とはそもそも何か?」というのをずっと疑問に思ってました。
この本読んで、大分スッキリ納得できた気がします。
この本では、貨幣や商業、金融業、銀行業がどう発達していったのか、国家や民間がどう連動していったのかを世界史のイベントと絡めて紹介してくれます。
歴史の中で貨幣が生まれ、手形や紙幣が発明され、為替・株式会社・有限会社・国債が生み出されていく様子を順番に分かりやすく説明してくれています。
現代の複雑な金融社会に至るまでに何があったのか、今のあの制度はそもそも何が起源だったのか、など、物事のルーツを紹介する本として大変おもしろく読めました。
また、随所に言葉の起源について豆知識が書かれてて、「え、あの単語ってこれが起源なの?」という驚きが楽しめます。
(ただ、これについては「諸説ある」うちの一つが紹介されている、と考えておいたほうが良いでしょう。)
以下、抜き書きメモになります。
- メソポタミアでの銀貨の誕生
- 初期は物々交換。
- やがて、農耕と牧畜に分かれ始めた。
- モノの交換を保証する「引換証」として、貨幣が誕生した。
- 「引換証」としての「信用」が貨幣の根っこにある。
- 山の牧畜民が扱いやすい貴金属として、銀が使われだした。腐らない、かさばらない、持ち運びに便利。
- → それ自体が壊れにくいので、貯蓄する機能が使えた。「冨」として蓄積できるようになった。
- 古代エジプトでは、金は王族の嗜好品としての価値がメインで、貨幣としては使われなかった。
- 牧畜民は、家畜を育てて財を作る=利子の世界、つまり投資の考え方。
- 羊の頭が英語で「資本」を意味するキャピタル(capital)の語源。
- 農業民は、災難に備えて蓄える貯蓄の考え方。
- 前7世紀にリディア王クロイソスによる、刻印付きのコインの発行。
- 今まで商人がコインを作っていたが、王がコインを作る、つまり王が「信用」を管理する時代が来た。
- ローマ帝国でも皇帝がコインの発行を管理。
- 女神ジュノー(ギリシャ神話でゼウスの妻のヘラ)の別名モネタ(Moneta)神殿が独占的にコインを鋳造。
- → 英語の "Money" の語源。
- 古代中国の殷(商)では貝殻を貨幣に。→「商」人の語源。
- やがて中国では、鋳物の技術が発達し、銅銭がメインとなる。
- 中世イスラム世界での商業の発展により、海運が発達する。
- 「海図のない航海」を意味するアラビア語が「リスク」の起源。
- イスラム教・キリスト教では、宗教的な規範としてお金儲けや商業に内面的な歯止めがかかる面もあった。
- 一方のユダヤ人は、それらの枠の外にいたので(ユダヤ教)、金融業・銀行業を発展させていった。
- 旧約聖書で外国人に対する利子取得が認められていた。
- 実際、旧約聖書ではお金を長期に預かった人たちの中で、単に守るだけの人よりは、お金を貸すなどして利息を得て、増やす人を神が奨励するエピソードがあったりする。
- イスラム経済から生み出された、現在でも使われている発明品
- アラビア数字
- 位取り記法
- 10進法
- 小切手
- 複式簿記
- 両替用のテーブルを意味するアラビア語 -> イタリア語の "banco" -> 英語の "bank"
- 小切手のチェック(check), 倉庫、雑誌のマガジンなどもアラビア語が起源
- 経済の発展により、貴金属ベースの貨幣が不足。
- イスラム世界では「手形」が発明され、中国世界では「紙幣」が発明された。
- 「信用」が根っことなる。英語の "credit" は、ラテン語の "credo'" 「私は信じる」の意味に由来することからも、貸し借りにおける「信用」がベースとなってることが伺える。
- 新大陸発見以降、新大陸で産出される銀が世界をめぐる。
- 「スペイン・ドル」→メキシコ独立後は「メキシコ・ドル」と呼ばれる銀貨に。
- メキシコ・ドルがガレオン船でマニラに送られ、明帝国に流れ込んだ。円形の銀貨だったので、中国では「圓銀」と呼ばれた。
- → 中国では同音の「元」、日本では「圓」→「円」、韓国では「圓」の読み「ウォン」と、それぞれのルーツとなる。
- 一応、「諸説ある」。 造幣局資料 : http://www.mint.go.jp/faq_coin#faq1
- 「ドル」の語源
- 13世紀以降、ヨーロッパのフィレンツェで鋳造された「フローリン金貨」が標準だったが、品不足となり、ボヘミアのサンクト・ヨアヒムスタールで「ターラー銀貨」が作られ、流通した。「タール」は「谷」の意味。
- オランダでは「ターラー」銀貨が「ダアルダ」と呼ばれ、イングランドでも「ダラー」と呼ばれ、これがドルのルーツになった。
- 金本位制 : 17-18世紀の覇権国家イギリスで、ヨーロッパの銀不足を克服するために、金を本位貨幣とする国際金本位制を確立。金と交換できる兌換紙幣としてポンド紙幣を大量に発行。
- これまではどちらかと言えば銀本位制だったのが、金本位制に世界規模で移行が始まる。
- 今まで世界で掘り出された金を全て集めてもオリンピック・プールの3~4杯分なので、もともと、発行したポンド紙幣を全て金に交換できるはずがない。分かっていて発行している。
- →イギリス国家の経済能力を裏付けとして、「今ではなくても後で交換できるなら、交換しなくても良い」という信用の元、ポンド紙幣が使われた。
- 「ポンド」:正式には「ポンド・スターリング」。「ポンド」はもともとは古代ローマの重さの単位。「スターリングシルバー」(sterling silver)は純銀を意味する。
- 中世イギリスで、古代ローマが銀1ポンドから240個の銀貨を作ったことを真似て銀貨が鋳造されたのが由来。
- 1944年、ニューハンプシャー州のリゾート地、ブレトン・ウッズで開催された会議で、金1オンスが35ドルとされ、金・ドル本位制(ブレトン・ウッズ体制)が成立。
- 円は1ドル360円に固定された。
- これにより、世界の通貨は「ドル」が基準となった。
- しかし、ベトナム戦争などでのアメリカの出費増からアメリカ経済が失調し、ドル紙幣から金への交換が進んでアメリカの金が少なくなり、金の価格が上がった。
- → 1971年8月、ニクソン大統領の緊急テレビ会見によりドルと金の交換一時停止が発表、これによりブレトン・ウッズ体制が崩壊した。
以下は「お金」に関する個人的な考察メモです。
「お金」の機能
Wikipediaによると「(1)支払い、(2)価値の尺度、(3)蓄蔵、(4)交換手段」とありますので、あながち間違った理解では無さそう。
お金は「冨」の一形態。
- 衣食住が基本的な冨。
- 人が「欲しい」と思うモノ・コト
- しかし、衣食住を物々交換で行うのは大変。
- 特に「食」が、長期的に保存できないのが多いし、かさばる。
- 「貯蓄」ができない。
- 物々交換するときの尺度が分からない。
- → そこで、交換のときの共通尺度であり、かさばらず長期に保存できる物質が媒介役として使われるようになり、それが「貨幣」となる。
- 貨幣を貯蓄することが、冨を貯蓄する、保有することとイコールになる。
- 現代日本では、貨幣を直接所有するのではなく、銀行の預金残高などで数値として表現されるデータを所有していることになる。
貨幣が貨幣足り得るには:
- 長期保存できること。
- かさばらない、持ち運びしやすいこと。
- モノ・コトと交換できる相互認識と信用があること。
- 物質的な価値よりも、それを作るコストの方が大きくなること。
「信用」というのが特に大事で、もしその貨幣が信用されなくなると、その貨幣が冨の交換に使えなくなってしまう。
では「信用」というのは何によって担保されているか?「誰もが欲しがる何かと、未来のどこかで交換できる保証」が信用となる。
→ 銀本位制、金本位制なども、銀や金が究極の交換機能を有していて、誰もが欲しがるので、それと交換できる引換証として貨幣が発行される仕組みとなる。
この場合、国家が「この引換証をもっていれば、未来のどこかで、これだけの銀/金に交換できますよ」というのを保証し、それにより貨幣が信用され、交換に使われる。
ある意味、物理的な制約というよりは人類の共同体の中で作られた幻想、架空の物語、設定、とも言えるが、それによりリアルな衣食住と経済が回るのが「お金」の持つ圧倒的なリアリティとなる。
というような次第で、ようやくお金が何なのか、少し分かるようになった。
日本銀行・日本の貨幣に関する参考HP:
- 通貨(貨幣・紙幣) : 財務省
- お金の話あれこれ : 日本銀行 Bank of Japan
- 独立行政法人 造幣局 : 貨幣Q&A
- [アーカイブ] 貨幣について調べる | 調べ方案内 | 国立国会図書館
- 日本銀行金融研究所貨幣博物館トップページ
- 「金融資料館」へようこそ
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