久しぶりに半田ごて握って、いろいろ思い出すことなど。 2000-2004の4年間、今は首都大学東京に統合された、東京都立科学技術大学の学生だった。工学部しかなく、その中の機械システム工学科の学生だった。 とはいえ電子工作キットなどで遊んでいたこともあり、電子系への興味も強かった。で、所属していた同好会の先輩の紹介で、電子系の研究室、通称「イノケン」(研究室の先生が井上という苗字だった)でちょっとしたお手伝いをすることになった。 当時、一般市民を対象とした公開講座をイノケンでは開催していた。内容はデジタル計算機を軸として、いくつかレベルがあった。パソコンの中身を分解し、電子計算機の概要とPICマイコンを使った簡単な電子工作&プログラミングを体験する初級コース、PICマイコンを使った本格的な電子工作&マイコンプログラミングを行う中級コース、極め付けが「CPUの創りかた」と同じく、実際にROM/ALU/命令デコーダ/レジスタをICで組み上げてみる応用コース。 お手伝いの内容は、主に初級コースで使うパソコンの運搬や会場の準備、初級コースの最終回で作るPICマイコンオリジナルキットの準備や、作業中の受講生のサポートなど。 イノケンのOBや、現役の修士、研究生なども手伝っており、終始アットホームな雰囲気で行われていた。お手伝いのメンバー同士、やはり電子系・パソコン系が好きなだけあり、雑談内容もCPUのアーキテクチャやPCの流行に始まり、PICマイコンだのインターネットだのとざっくばらんに雑談話を咲かせた。 イノケンの主である井上先生は、公開講座をかれこれ10年以上続けていたそうで、教育に情熱を注いでおられた。 「CPUの創りかた」の実際の製作をあきらめ切れなかった理由は、結局卒業するまで、イノケンの応用コースに相当するCPUの組み立てを出来なかったことがある。この本を購入したのは2003年の10月、まだイノケンでお手伝いしていたときだ。 自分は初級コースのお手伝いが中心だったため、本格的な電子工作を行う中級コース以上のお手伝いには携わらなかった。その事に対して劣等感を抱いており、いつかCPUモジュールの組み立てまで追いつきたい、と思いつつも生来の腰の重さで、一歩踏み出せなかった。 そこにこの本が出てきたので、「これならいけるかも・・・」と思いお手伝いメンバーや井上先生に紹介もしたりしたのだが、その後まもなく2004年春に卒業を迎えたりして、結局イノケンでCPUを組み上げる宿題は果たせなかった。 ちなみに、今回の作例でモジュール分割して細かく製作したのは、イノケンでも同様の手法で製作していたからだ。 公開講座は毎週土曜日に開かれ、一つのコースが(少なくとも初級コースは)4回セットになっていた。 受講生は一般市民が大半なので、半田ごてすら握ったことが無い人が殆ど。 もっとも中級コース以上になれば、少なくとも初級コースの最後でPICマイコンオリジナルキットを製作しているため、半田付け経験は有ることになる。応用コースはいわずもがな。 で、毎週一回の開催なので、特に応用コースともなれば4回セットでは終わらない。 それでも、達成感や一回で確実に動作するモジュールを作るためであろう、今回の作例で示したようになるべくモジュール化し、モジュールごとに動作確認できるように配慮されていた。 最終的に全モジュールをバスにつなげ、大きな一枚板に固定し、完成である。 今回、モジュールごとに半田付けしたり、モジュール間を接続するためのコンタクトピンをちまちま作っていたり、ALUやレジスタ周りの細かい配線を弄っていて、そのときの情景をまざまざと思い浮かべながら作業した。 その後何度か、当時のイノケンメンバーと飲み会に行った。 今度飲み会に行くときは、今回の作例ページを話のネタに持っていこうと思う。 7年間気分だけ空回りを続けた末に、ようやくまた一つ、ピリオドを打ち終えた。