2018-07-15, 16 と、青森県むつ市の霊場恐山に一泊二日でお参りというか観光してきた。 * 7/14-15 : 往路は八戸に前泊 東京から八戸までは東北新幹線で3時間と少しで本数も多いのだが、問題は八戸~JR下北駅と、JR下北駅~恐山にある。 JR八戸駅~JR下北駅は青い森鉄道と途中の野辺地からの大湊線になるが、これが本数が少ない。2時間程度に1本。 さらにJR下北駅~恐山のバスも2-3時間に1本。 つまり、待たずに乗り換えというのが相当難しい。乗り継ぎが上手くないと、八戸か下北駅で1-2時間はたっぷり待つことになる。 いずれも時刻表はインターネットで公開されている。それをもとに恐山から逆算していくと、15日中に東京から恐山まで移動するとなると途中トラブルによる遅延バッファが確保できなくなる。 (ちなみに羽田~青森でJALの空路という手もあったが、検討が間近だったためか片道だけで3万数千円となり、新幹線往復に匹敵する金額となった。お財布事情から空路は断念) 恐山自体は観光スポットとしては徒歩45分~1時間程度で見て回れる。宿坊「吉祥閣」にも泊まるので、恐山到着日は帰りの時間は考慮しなくて良い。 とはいえ、歩き回る疲れなども考えると少し余裕を持ちたい。つまり、恐山には夕方遅くではなく、昼過ぎ頃には到着したい。 そうなると、東京を相当朝早くに出ないとバッファ込みで乗り継げなくなる。 そこで今回は思い切って、14日に八戸に前泊することにした。 厳密にはJR八戸駅ではなく、そこから八戸線で2駅の「本」八戸駅近くのビジネスホテルに前泊。 これなら、14日/15日とかなり余裕を持って動ける。 ついでに八戸の海産物なども食べられそう。 ということで、7/14の 15:20 東京発はやぶさ27号に乗り、無事 18:13 JR八戸駅到着。その後 18:22 にJR八戸駅発の八戸線、鮫・久慈方面の下り列車で二駅、18:30に本八戸駅に到着。 どうやら新幹線停車駅の「八戸」よりは、「本八戸」の方が市街に近いらしく、本八戸駅から徒歩数分で八戸市役所があり、さらに徒歩数分でホテルや飲食店が賑わう街なかに出る。 その日はそこのビジネスホテルで宿泊した。 ホテルの1Fに居酒屋があり、そこのお食事券付きのプランだったので夕食をそこで食べて、ウニとかイカとか美味しかったです。 明けて 7/15 は 09:32 に本八戸駅発、09:41 に八戸駅着。そこで少し小休憩したのち、10:51 八戸駅発 JR快速リゾートあすなろ下北1号・大湊行に乗る。 ここから、三沢を経て野辺地、野辺地から大湊線でひたすら下北半島に向けて列車に揺られる。 12:34 にJR下北駅到着。ここで、恐山が開山している5月~10月は上記の快速リゾートあすなろの時間に合わせてバスが増発してくれてて、12:45 恐山行きのバスにそのまま接続できた。 無事 13:30 頃恐山到着。 ちなみに、恐山の途中に「冷水」という停留所がある。ここは山の清水が湧き出ていて、飲むと寿命が延びるとか。 停車ボタンを押す人はいなかったんですが、運転手さんは勝手に停めて、「どうぞ降りて、観てってください」とサービスしてくれました。 自分含めて12,3人くらいの乗客でしたが、みんな湧き水を味見してました。 * 7/15 : 恐山宿坊「吉祥閣」に1泊 恐山: http://www.mutsu-kanko.jp/guide/miru_01.html 862年開山、当初は天台宗の修練道場。現在は曹洞宗。 恐山温泉宿坊 吉祥閣: http://mutsu-kanko.jp/guide/osorezan_annai.html https://www.aptinet.jp/Detail_display_00004276.html 恐山ですが、聞きしに勝る風景。漂う硫黄臭。そこかしこに積まれた石、宇曽利湖に吹き下ろす風でカラカラ回り続ける風車。 硫黄を含んだ蒸気が吹き出ているポイントも数箇所ありました。 (夜に法話をしてくれた院代によると、昭和30年ごろはもっとそこかしこで蒸気が吹き出てたらしく、近年は大分落ち着いてるとのこと。) 火山特有の軽石が大量に転がっており、賽の河原に見立てて、石を積んだ山があちこちにあります。 お地蔵様や観音様の石像・お堂もあちこちにあり、昨日今日買ってきたばかりと思われるようなお菓子などが沢山お供えされてました。 イタコさんとは会いませんでした。というのも、恐山にイタコが集まるのは 7/20 頃と10月の体育の日前後に開催される大祭にあわせており、自分が行ったのはその1週間前で、まだイタコが集まってなかったのです。 (明けて 7/16 には、イタコさんが小屋を立てたりして準備を始めてました) ここで恐山とイタコさんの関係ですが、恐山自体は現在は曹洞宗の「恐山菩提寺」が管理してます。お寺自体はむつ市の市内にあり、雪解けする5月~10月の間に「霊場恐山」に出張してるような状況。 イタコさんの方ですが、もともとこちらは東北地方に根付いている民間のシャーマン(巫女)で、普段は地元でひっそりと自営業的にやってるそうです。 恐山の大祭に合わせて、縁日の出店じゃないですが人が沢山くるので営業チャンスとばかりに恐山に集まって、死者を降ろす口寄せを行う。 曹洞宗の方は、基本的にはイタコさんについて特に管理もせず、くるもの拒まずで受け入れてるだけで、特にイタコさんの営業窓口とか管理的なことはしていません。要するに無関係。 ところが、お寺さんに掛かってくる電話の8割近くがイタコさんに関わる電話とのことで、「恐山=イタコ」の図式は中々覆し難いようでした。 特筆すべきは、硫黄臭漂う火山ならではの温泉。境内には4箇所の温泉小屋が建てられていて、男湯・女湯・混浴それぞれあり、入浴することができます。 硫黄成分が強いため長湯は推奨されてません。数分~10分程度までとの注意書きが貼られてます。 真水のシャワーなどは無いので、その点も注意が必要です。 宿坊の大浴場なら真水・お湯のでるシャワーがありますが、そちらは宿泊者専用となっています。 温泉入ってみましたが、ポカポカで気持ち良かったです。 硫黄臭が強く、温泉を出てからもそうですが、温泉卵食べたいな~と滞在中ずっと思ってました。 宿坊の方は、曹洞宗のお寺ということもあり、食事はみんな揃って精進料理。食べる前と後にみんなでお唱えします。 ご飯のあとは、恐山菩提寺の院代(住職代理)を務める南 直哉氏の法話を1時間ほど聞くことができました。 全く不勉強で予備知識無しで聞いたのですが、インタビューや著作活動、座禅と仏教の議論などで大変有名な方で、思いもかけずそのような方の法話を聞くことができてラッキーでした。 ブログで恐山や仏教などについて記事を沢山書いてる人でした: 「恐山あれこれ日記」 https://blog.goo.ne.jp/jikisaim 内容も面白く、笑いを誘いつつも所々でドキリとさせるようなツッコミを入れてくるなど、1時間があっという間に過ぎました。 その他、参考にした宿泊レポート: - https://gurutabi.gnavi.co.jp/a/a_1252/ - http://simokita.org/sight/osore/ - http://www.geocities.jp/la_valise_m/hotel/08_hotel_kissyoukaku.html - http://www.geocities.jp/oyu_web/t348.html - http://peepar.net/osorezan * 7/16 : 朝のお勤め 宿泊者は朝6時半からの朝のお勤めに参列。 驚いたことに、早朝にもかかわらず宿泊者以外の方も参列していた。 地元の方か、あるいは遠方からはるばる車で来られた方たちのようだ。 朝のお勤めで驚いたのは、般若心経の読経で、和太鼓をドンドコドンドコ早めのビートを刻みつつ唱えていた点。 これがお堂に響き、まるでラップのビートのように一気に般若心経の読経が終わった。このような読経には初めて遭遇した。 その後お堂を移ってそちらでもお勤め。こちらは卒塔婆供養などで卒塔婆を頼んだ人たちも参列しており、お勤めが終わったあと、卒塔婆を配っていた。 宿泊者の中にも、年配の方が何名か卒塔婆を受け取り、外の卒塔婆建てるところに持っていっていた。 その後朝食(精進料理)を食べて、解散。 帰りが問題で、恐山発のバスは 10時からあるが、10時発だと下北駅が10:45着となり、八戸行きの電車は 14:11 下北駅発からとなって数時間待つ羽目になる。 10:26発の八戸行に乗れれば楽だが、バスではどうしようもない・・・ ということで、宿坊の人にお願いしてタクシーを呼んでもらいました。恐山からJR下北駅まで、タクシーで 4,350 円でした・・・。 (他の宿泊者はみんな、マイカーか 13時恐山発のバスみたいで、タクシーは自分一人だった) そこで 10:26 発の八戸行に無事接続、12:30には八戸駅に到着できました。 新幹線は 16:16 八戸駅発のはやぶさ30号を予約していたので、大分時間が空きました。 そこで、せっかくなので八戸駅から100円バスで行ける「八食センター」に行ってみました。 https://www.849net.com/ 八戸の海産物などが集まる市場で、観光客向けの食堂やお土産も沢山売ってます。 ホタテ、牡蠣、ウニ、ホヤ、イカ、サバ、ほっけなどが沢山並んでました。食堂でも食べてみましたが、大変美味しかったです。 ちょうど連休ということもあり、家族連れ・親子連れで賑わってました。 海産物を堪能した後、100円バスでまた八戸まで戻り、お土産など買って 16:16 八戸発のはやぶさ30号で 19:04 東京到着、帰宅しました。 * 感想 2013年に高野山・比叡山。 その後2-3回ほど京都旅行の機会があり、都度あちこちの寺社を巡り、東西本願寺・真言宗・臨済系のお寺参り。 2016年に身延山(日蓮宗)、福井の永平寺(曹洞宗)。 そして2018年に恐山と、ついに日本仏教三大霊場を制覇、さらに主要宗派の本山系をお参りできた。 東北地方では、死者の魂は恐山に集まるという信仰が根付いている。 そのため、恐山に来ることで死者と対話できる(物理的な意味ではなく、多分、それぞれの心の中で)。 自分の場合、特にそうした信仰ベースがなかったこともあり、恐山に来てみて、亡くなった親族が「いる・ある」ような感覚は感じなかった。 しかし、自分は感じないものの、積み重ねられた膨大な小石の山。そこかしこの地蔵・菩薩像に山のように積まれた供物。石に彫ってある死者の名前。 死者に関する膨大な思念が、恐山という場所に凝縮されていることは確かに感じた。 恐山が最初に開山したのは、890年代に天台宗による。その後、紆余曲折があったらしく今は曹洞宗管理となっている。 念仏、浄土、真言などのツールを持たず、臨済とも違い、「ただ坐る」を極限まで煮詰めた曹洞宗だからこそ、膨大な死者への思いを受け止める・・・というか、うまく恐山そのものへ素通しできているのではないかと、そんなことを感じた。 なんというか、恐山への思いは、念仏とか浄土とか真言などの仕掛け・設定・方法論で味付けできるようなものでもないし、それが助けになるような代物でもない気がした。 「恐山に行けば、亡くなったあの人と会える・話せる、感じることができる」という世界観に対して、そうしたツールは余分でしか無い。 生と死に禅という形で体当たりしてきた曹洞宗だからこそ、参拝者の中の恐山への想いをあるがままに昇華させられるのではないか。 そんなことを考えた。 三大霊場はそれぞれ特色があった。以下は個人的な見解。 - 観光第一は高野山。紀州の山奥だが、周辺の観光スポットも多く、寺域も観光色を強く出していて、観光しやすい。 - 交通の便第一は比叡山。京都から1時間ほど観光バスに揺られるもよし、車の便も良し。 - 峻厳第一が恐山。観光スポットでもないし、交通の便も悪い。たとえ観光で訪れたとしても、「今、そこ」の死者への想いに圧倒されることは確実。 恐山は2つの意味から、「終点」だな、と感じた。 1つは、霊場としての日本仏教の北端であること。膨大な思いが集まる霊場・寺域としてはおそらく日本最北であり、東北の地元にがっつり根を下ろしている。 2つは、生死の終端であること。これはもうそのままで、「死ねば恐山に上る」とまで信仰されてる以上、死の終端になっている。 恐山は単なる観光スポット・奇景スポットではない。今、同じ時間を生きる人達の、死者への思いがリアルタイムに染み込んでいく。同じ空気を吸う。 つまるところ、今なお運営され続けている墓地・霊園と同等に感じる。 それが、観光スポットとして強く押し出されている他2つ・高野山、比叡山との大きな違いに感じた。 ようするに観光色薄め、真面目な場所でした。 ちなみに、心霊現象とか幽霊の話は、無いそうです。 実際行ってみて、「幽霊になったとしてもこんな場所に長居したくねーなー・・・」と思うほどの荒涼とした場所。 そんな場所で、そこかしこに地蔵・菩薩像があって新しいお供えが供給され、毎日毎日読経されてりゃ、むしろ幽霊となって恐山に留まる方が難しいのでは・・・とすら感じました。 もうね、地蔵や観音菩薩によって、即成仏ですよ。幽霊となってあの場所に出た日にゃ。