会社の確定拠出年金に入って1年が経ち、そろそろ真面目に取り組もうかと思い、年金とか厚生年金基金とか確定拠出年金の本を数冊読みました。 まだまだ勉強不足感はありますが、なんとなく考えが固まってきたので、読書感想文として整理します。 * 老後資産と年金の仕組みを学ぶ 読んだ本: 「老後を見据えた最初の一歩 年金・資産形成かんたんQ&A」 #amazon||> ||< → 年金をメインとして、老後向けの資産形成についての簡単なQA集です。概要をざっくりと幅広く学べるので最初の一冊として良さそうでした。 「教養としての社会保障」 #amazon||> ||< → Amazonのレビューにある通り、元厚生労働省の官僚として、年金も含めた社会保障の現状とこれからを「鷹の目」で解説している、稀有な一冊です。 最終的な国の政策の評価は置いておいて、少なくとも厚生労働省の中の人が、どんなことを考え、思って、年金や生活保護・医療など様々な無理難題に対処しているのか、著者個人の思いや熱意が伝わってきます。 年金の仕組みなんですが、実は自分、しばらく前までは自分が払ったのが預金口座みたいなところに積立されて、それを65歳になったら受け取れるものだと思ってました・・・。 しかし、最近になって年金を学び、その時その時に支払われた年金が、その時の受給者に回っているということを知り、「なーんだ、自分個人専用口座に積み立てられてるんじゃないのか、じゃぁ自分が受け取る時は、その時の現役世代の稼ぎから支払われるわけね、そりゃ少子高齢化が進めば受け取れる額が減るわけだ・・・」と(´・ω・`)ショボーンとなりました。 年金の仕組みの、特に世代間の関係が分かりやすく整理されてるのが、日本年金機構のHPから閲覧できる「知っておきたい年金のはなし」パンフレットです: - http://www.nenkin.go.jp/pamphlet/seido-shikumi.html 中々ことお金の話になると、1円でも多く、損はしたくない、とかなりシビアな感情が誘起するところですが、ではそもそも「年金」とはどういう哲学・思想背景で制度が設立されてブラッシュアップされたのか? そもそも国や官僚は、国民に対して年金をどう理解してほしいのか、どういうスタンスで付き合って欲しいと考えているのか? 「教養としての社会保障」がオススメなのは、そうした中々表に出てこない、「年金という制度に隠された国や官僚の"思い"」の一端を覗けるのがあるから、かもしれません。 また、そうしたところを少しでも知っておくことで、国の社会保障に対する今後の施策・政策動向に対して個人としての一時の衝動的な感情に終わらせず、ではどうしていけばいいのよ?というこれからを考える余裕が生まれるのではないか、とそんな感じです。 * 年金の3階建て構造 - 1階, 国民年金 : 全ての国民が加入する年金 - 2階, 厚生年金 : 事業所など企業の従業員などが加入する追加の年金 - 3階, 厚生年金基金, 企業年金(確定給付型:DB, 確定拠出型:DC) この他に新たに iDeCo が加わり、自営業などでも2階部分をiDeCoで手当することが可能になった。 * 「厚生年金基金」とは何だったのか? そもそも「厚生年金基金」とは何か?というのが気になりまして、ニュースなどでなんとなく、厚生年金基金がどんどん縮小していき、これからは自己責任の確定拠出年金という流れくらいしか知りませんでした。 そこで、10年位前の、厚生年金基金の危機が叫ばれている時代の本を2冊ほど読んでみました。 読んだ本: 「誰も知らない厚生年金基金 ―日本版401k誕生秘話!」 #amazon||> ||< 「会社の年金が危ない―厚生年金基金・適格退職年金はこうして減らされるそして会社は行き詰まる」 #amazon||> ||< 2冊しか読んでいないので理解不足・誤解もあると思うが、現時点での「厚生年金基金」に関する理解: - それぞれの会社ごとに個別に運用する年金の仕組み。 - 厚生年金の一部を代行したり、厚生年金に上乗せする加算部分を運用している。 - 元をたどれば、平均寿命が60歳とか70歳だったころ、60歳で定年退職して長く務めてくれた従業員に対する「功労金」「報奨金」「退職金」の積立運用。 - そこに、国の方から厚生年金の仕組みの代行をすると企業にとってメリットがあり、年金化することで受け取る従業員側の利率メリットもあるということで年金形態になった、と理解してます。 -- 超大企業であれば専門家を雇って一社・あるいはグループ会社で回せることができるが、中小企業では難しいため、同業の企業でまとまって基金を運用したりしていた。 - ただ、読んでみた感じ、そもそも投資や金融の素人である一般企業が年金という、数十年先に支払うことになる「人様のお金」を運用するのはそもそも無理だったんじゃね?という感想。 - ではなぜそもそも無理だったのが成立していたのか、というと、第二次大戦後の復興におけるベビーブーム、人口ボーナスにより高度経済成長が発生し、金融の素人でもホッておけば将来の支払いに必要な予定利率を達成できていたから。 - しかしバブルが弾けてデフレ不況に突入し、証券会社すら破綻する(山一證券破綻)時代になり、このスキームが破綻し、予定していた利率で運用できず(=お金を増やせない)、積立不足に陥る基金が続出した。 一言で言えば、「日本限定の高度経済成長という局面でしか通用しなかった皮算用」。 とはいえ、老後資産については国と会社がしっかりやってくれると信じて30年・40年と長年会社に尽くし、真面目に働いてきた従業員にとっては、信じていた会社に突然裏切られ、寒空の下放り出されたも同然で、その驚き・不安・落胆・失望・怒りは相当なものがあると思う。 そして時代は変わり、今や一社でずっと新卒から定年まで働くことは無くなり転職が当たり前、そもそも正社員雇用すら難しい時代になった。 一方で金利は下がり、もはや銀行の定期預金では満足な利息は付かない時代となり、政治経済は流動的で、どこにも安定してお金が回る保証が無くなった。 つまるところ、世界情勢の中で、数十年後に支払う年金を企業の自助努力で準備して運用するのがもはや不可能な時代に突入した・・・これが、自分の厚生年金基金に対する理解。 個人的には、「無理なものは無理」なので、老後資産の積立は自己責任で実施、ただし国や企業がそれを節税対策などを通じて支援する、という今の方向性が時代の要請なのかなぁ、と思いました。 また、IT企業にいると転職は当たり前なので、会社ごとに運用が分かれてて転職するほど管理が大変になる厚生年金基金よりは、積み立てた資産のポータビリティが確保されている確定拠出年金の方がフィットしてると感じました。 企業が無理なもの、個々人が素人状態で回すのなんか余計無理じゃん・・・とも思うのですが、実際の確定拠出年金では、お金を預けて投資のプロが増やす投資信託系が多いため、個々人が株価とにらめっこしてデイトレーディングする必要は無いようです。また、とにかくリスクを取りたくない人向けに元本確保型の運用商品も用意されてるので、そっちを選べばまぁ、マイナスになることは無いようです。 どちらにせよ、自分自身が現時点で所属している企業では厚生年金基金は運用しておらず、確定拠出年金に参加している状態ですので、選択肢は無い状況です。 とはいえそもそもなぜ確定拠出年金が導入されたのか?その前の厚生年金基金とはなんだったのか?なぜ厚生年金基金がこれほどshrinkしてしまったのか?というバックグラウンドを知らないと、「今、確定拠出年金」という流れに自信をもって飛び込めない、という不安があったので、少し前の書籍を掘り起こして読んでみた次第です。 * 確定拠出年金との付き合い方 結局、確定拠出年金をやることになって1年ほど積み立ててみたものの、元本確保型しか使っておらず、せめて手数料分だけでも増やしてプラマイゼロにできれば・・・でもどうすりゃえーねん、となって読んだ本: 「脱老後難民 「英国流」資産形成アイデアに学ぶ」 #amazon||> ||< 「確定拠出年金の教科書」 #amazon||> ||< 「確定拠出年金の教科書」の方がシンプルで分かりやすく、実際にどんな運用商品を選べばよいのか具体的に書かれていました。 一般に確定拠出年金を運用する際の参考としてはこちらの書籍が取っ掛かりになると思います。 一方の「脱老後難民 「英国流」資産形成アイデアに学ぶ」は、イギリスにおけるDC(確定拠出年金)の運用状況について非常に詳しく書かれており、それと対比することで日本での今後を考える、という内容になっています。 そのため確定拠出年金の仕組みそれ自体に関わるような当事者にとっては面白いかもしれませんが、日本でとりあえず運用したい人向けには内容と分量共にちょっとヘビーかな、と思いました。 「脱老後難民 「英国流」資産形成アイデアに学ぶ」と「確定拠出年金の教科書」とで、オススメの運用方針について若干の差異があります。 本のネタばらしになるので控えますが、これについては著者のお互いのバックグラウンドやスタンスの差かなぁ、と感じました。 数十年に渡り運用していくお金ですので、どういう戦略で取り組むか、個々人がそれぞれ勉強して、決めてくしか無いかな、と思います。 またそれこそが、国や企業が「も~無理!」とお手上げした厚生年金基金に代わる、確定拠出年金の哲学なのかもしれません。 (国や企業ですらお手上げしたのを、素人がどうやって運用すんねん・・・という話ではありますが、そこは投資信託を活用していく、というのが日本やイギリスの主流のようです。)