オレオレ詐欺や、投資詐欺などで、行動経済学や心理学の知見がどう悪用されているか?また、その予防についても、同じ知見を活用してどう効果を出すか?が調査・考察されている非常に面白い論文を読んだのでメモ。 - 行動経済学を応用した消費者詐欺被害の予防に関する一考察|知るぽると -- https://www.shiruporuto.jp/public/document/container/report6/ 特に、行動経済学や心理学の知見を被害予防策に活用する考察の「4.心理状況に即した詐欺被害予防策」が面白い。 いくつか、気になったトピックを抜書きする。括弧内は個人的にしっくり来た言い換え。 - 情報過多への配慮 -- →ポイントを3つ以下に絞る。(「3行でまとめ」) - 自信過剰傾向への配慮 x 自尊心への配慮 -- → 「自分は大丈夫だ」という自尊心に配慮し、「あなたは大丈夫かもしれないが、周りの人を守るため~してほしい」という伝え方の工夫。 - 「心理的反発」に考慮した呼びかけ・表現の工夫 -- →「~してはならない」という禁止の表現を使うと選択の自由を侵されたように受け止められる。 -- →肯定的ないしはポジティブな表現を無意識に優先する。「ポジティブ優位性効果」の活用 - 「フレーミング効果」(=「ものは言いよう」) -- 「詐欺被害者が消費者の 13%にも及んでいる」と伝えるかわりに、「87%の消費者は被害を回避しており、防止策を学ぶことであなたもその仲間になれる」 以下の点も面白い。 - 詐欺に対する「自分は大丈夫」自信過剰傾向 -- → 全体的に高いが、高齢者は高くなる傾向。 - 自身の金融リテラシーについても、リテラシーが低いほど過大評価する傾向がある。 連邦取引委員会(FTC)が2003年に始めた「全米電話勧誘拒否登録制度」というのも、これ日本でやってくれないかなぁ・・・。 日本だと、電話機に迷惑電話の着信拒否機能があったりする。また、ネットで電話番号を検索すると、迷惑電話の評判など出てくるのでこれでも分かる。 電話経路での対応の原則を抜書きする。 - 原則1:説得的話法の速やかな察知と会話の打切り - 原則2:第三者と相談する機会の確保 - 原則3:個人情報の秘匿と質問・反論による牽制 - "「今だけ、県外(遠隔地業者)、あなただけ」は悪徳業者を見分ける三大要素" 自分の言葉でまとめなおすと: - こちらのペースを鑑みずに事を性急に進ませようとしたり、やたら危機感・恐怖感を煽ってくる電話は危ない。 - また、第三者と相談することを嫌がったり、相談させずに事を進ませようと誘導する電話も危ない。 - 相手方に名乗ってもらい、折り返し「相手ではなく、相手の所属組織の窓口」に電話して繋いでもらう方法は防止効果が高そう。 - 折り返し連絡は、時間を取ることで感情をクールダウンさせ、理性を取り戻す効果もある。 -- 当該組織の存在確認&業者名で検索して注意喚起が出ていないかチェック・電話番号が迷惑電話か調べる・消費者センターに確認するなどの対応をその時間で取ることができる。 - オレオレ詐欺など、家族を名乗る電話については、家族間のみの秘匿情報を尋ねる手もある。 -- ただし、こうした質問による切り返しで、却って自らの個人情報を相手に渡してしまうこともありえるので注意が必要。 また時代の変化として、詐欺手法の変化:警察や銀行員を騙ったキャッシュカード受け取り、電子マネー購入、仮想通貨取引などが増えてきている点も興味深かった。 例:「仮想通貨は必ず値上がりする」などの勧誘 参考: - 詐欺的な投資勧誘トラブル(注目テーマ)_国民生活センター -- http://www.kokusen.go.jp/soudan_now/data/toushi.html - だまされないで(特殊詐欺に注意) 警視庁 -- http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/kurashi/tokushu/index.html - こんな電話は振り込め詐欺 警視庁 -- http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/kurashi/tokushu/phone/koreisagi.html - 警察庁振り込め詐欺対策HP -- https://www.npa.go.jp/safetylife/seianki31/1_hurikome.htm